2016年をふりかえる


のちに見れば、2016年はUQiYOの飛躍の年だといえるかもしれない。
挑戦的なミニアルバムの発表。服飾に踏み込んだプロジェクト。破格のビッグイベントへの度重なる出演。アニメーション作品への、主題曲の提供とクラウドファンディング支援。音楽配信サービスを通じた世界的なリアクションの獲得。そしてファンを着実に増やしていった数々のステージ。
UQiYOの多彩な活動を、季節に沿ってふりかえってゆく。

〜 新年 〜

Mini Album 《Black Box OTOGI vol.01》 リリース

元ちとせ・酒井景都のゲストボーカリストの招聘と深い音像でブラックボックス(=未知の領域)に誘う、UQiYO初のミニアルバムを2016年1月21日にリリース。
特別な体験を味わって欲しいという想いから、こだわり抜いて作られた特装版は、ほぼ原価にして21,000円と驚きの価格。購入の英断を下したファンたちが、満足した気配を匂わせつつ内容について一様に黙していたことからその充実の特別ぶりが忍ばれる。
サブタイトルOTOGiは「音を着る」の意であり、アパレルブランドPHABLIC×KAZUIのデザイナー瀧澤日以との出会いから触発されたテーマ。2016年はステージ衣装もPHABLIC×KAZUIの製品で固め、より洗練されたライブ体験を創り上げてゆくこととなる。

〜 春 〜

Black Box Tour (OTOGi – 音を着る-)

3月より、新アルバム《Black Box》と、黒を基調としたコスチュームを携えて東名阪ツアーを実施。
名古屋は高架線下の秘密基地めいたレトロなK.D ハポン、大阪は格調高いモダンアンティックな細野ビルヂングと、まったく違った個性をもつ会場において、枕木の起こすリズムや白壁の密やかな物語を自らの世界に織り込み、UQiYOのライブに触れ慣れない人々を魅了した。
名古屋会場では、今やPhantaoのトレードマークである、片隅に緑のきらめきを宿す黒縁眼鏡を制作したstudio skyrocketの製品も展示されており、ツアータイトルにいっそうの厚みを加えた。
ツアーファイナルは、UQiYOファンにはもはや馴染みのホステル&バーラウンジである蔵前Nui.にて初の2日公演で行われた。酒井景都、トロンボーン藤下宗一郎、サックス上野悠・平野里久のゲストを迎えて華やかさを増した2夜は、満員の動員、万雷の喝采で締めくくられた。会場では、偶然触れた音楽に聴き入る外国人旅行者と英語と中国語でコミュニケーションをとるシーンも垣間見られ、UQiYOのワールドワイドな受容を予見させるものとなった。

ARABAKI ROCK FES 2016

4月末。元ちとせのバックバンドとしてARABAKI ROCK FESに乗り込む。初となる大舞台での成功と反響がUQiYOとしてのSUMMER SONIC 2016の出演にも繋がった。大規模ステージで得た舞台度胸も貴重な財産となる。

〜 夏 〜

PHABLiC × UQiYO 〜音を“着る”MONOZUKURi イベント〜

BLACK BOXと共に始まったプロジェクトOTOGi。BLACK BOXツアーで衣装提供を担った瀧澤日以と共に“音を着る”ためのライブプリンティングが行われた。モチーフはBLACK BOXリリース記念に作られた幾何学ワッペンの組み合わせ。観客はあらかじめインクに「吸い込まれる」曲を指定し、瀧澤氏はその音を浴びながら、シルクスクリーンを用いてTシャツやトートバッグへプリントした。このイベントは、「音は色々な物に記録されている可能性がある」という考えをインクに応用したものである。「念のため」、モチーフにQRコードも添えられ、当日のライブ音源をスマートフォンで聴くことのできる、UQiYO初のバンドTシャツが誕生した。
瀧澤氏とは、原宿VACANTで8月に開催された「五感で楽しむ」音楽&マーケットイベントPHABLIC CARAVAN OTO MATOUでも共通の価値観を心地良く展開した。プロジェクトの継続が期待される。

夏フェス:新木場SUNSET2016/SUMMER SONIC2016/Augusta Camp2016

都内をはじめ千葉、会津若松、金沢と精力的にライブを重ね、技術を向上させる中で、長く苦楽を共にしてきた愛用のミキサーを買い替え(「(最後に)胴上げしたかった」)、UQiYOの特長のひとつである聴衆参加曲のバリエーションを増やすなどしてアピールに磨きをかけた。共演者を通じて獲得した新規ファンも少なくない。

その最たる門戸となったのが、7月に行われたSpitz主催の新木場SUNSET2016であった。「前座だと思ったら、まさかのトリ前」の注目集まる番手。「口からいろんなもの出そう」な緊張の中、万全の楽曲と衣装で堂々と打って出た。STUDIO COASTを埋め尽くす人波がUQiYOの音で揺れ、無数に突き上がる腕が歓心と激励を熱く表した。この日に初披露された新曲《URM’POCKET》は、配布用音源二千枚が用意され、楽曲とその姿勢において好評を得た。この曲は2種めのバンTであるポケット付きTシャツにも内蔵されている。

盛夏は《URM’POCKET》のMV撮影や、公邸での演奏など一般非公開の活動が続き、ファンの間では期待と緊張が広がっていた。8月、SUMMER SONIC2016出演である。
前日の雨による泥濘も粗方乾いた野外ステージに詰めかけた人々の眼前で、UQiYOは職人的な真摯さで元ちとせをエスコートしきった。生い茂る植物や肥沃な土壌を思わせる力強い歌声をシャープでスタイリッシュなエレクトロで引き立たせ、絡め、溶け合わせ、歌姫の新たな魅力を引き出してみせた。
続く9月のオーガスタキャンプでも、1万5000人を前に3度目のステージを「大きな事故も無く」「いい精神状態で」手堅く終えたのち、再びBLACK BOXのツアーに入る。

SPOTIFY TOKYO RISING

世界最大級の音楽配信サービスSpotify。日本におけるサービス開始は9月末であったが、UQiYOは国内に先駆けて海外向けにリリースを果たしている。参入の決断を下したのは、「Spotifyに集まる視聴者がちゃんと音楽を好いていること」、「Spotifyチームがちゃんと次の文化として音楽が、『音楽好きに行き渡る』ように作っていること」が大きい。かねてよりCDを媒介とした既存の売り方を懸念してきた彼らである。また国内での開始翌日に発表されたCNETのインタビュー記事において、海外で評価された実績のある日本のインディーアーティストとして名指しで取り上げられ、耳目を集めてのスタートとなった。

〜 秋 〜

Black Boxers Tour

暑気の残る金沢ART GUMMIを皮切りに、若々しい勢いに満ちた京都のHomecomingsを迎えた大阪CONPASSから、とんぼ帰りで下北沢MOZAiC、夏の余韻が濃い長崎・対馬BORDER ISLAND FES、福岡・糸島ART音楽村祭と、作り手の熱意が伝わるイベントへ次々に参加。
一方で、夏からの度重なる大舞台の疲れを癒し、また心身・製作環境のコンディションを整えるメンテナンスの時期にもなった。モニター用のミニミキサーを投入し、「肉食いたいです、塊り肉!」との熱い要望(by Phantao)を叶えた浮酔BBQで英気を養い、夏の終わりに大窮地を経験したYuqiはHDD環境を整え直し、とツアーファイナルへ向けて早めの冬支度に取り掛かった。
今回のツアーは初めてのオール対バン式。名古屋Berkley Caféではきりりと引き締まったポップさが光るATLANTIS AIRPORTを東京から招き、札幌MEET.では羽毛のように柔らかい歌と明確なアタックの地元出身sleepy.abと対談まで行い、仙台arrondissementでは懐かしさを撫で起こすメロウなギターとクリアな声色のOLDE WORLDEと親密な空間を分かち合った。次第にツアー常連者が形成されていった終盤であった。彼らとその土地ごとの聴衆とで、本編も、その後に設けられた番外浮酔も、ゆったりと和やかな空気と交流が生まれていた。
11月、ファイナル。会場は、奇しくもかつて「ボロ負け」とまで語った対バン相手ROTH BART BARONから刺激を受け、音圧と説得力の底上げを果たした新代田FEVER。Laika Came Backの骨太でいて繊細な、幽玄な空気を大事に受け取るようにステージを換わったUQiYOは、日本各地を走り回り、重ねた出会いと経験を滲み込ませた楽曲を、練りに練った構成と気迫で聴かしめた。惜しみない拍手に向ける笑顔には、ほぼ1年がかりで取り組み続けたグランドツアーの幕を見事に降ろした安堵と手応えが感じられた。

短篇アニメーション《火づくり》

新進気鋭のアニメーション監督・松浦直紀に請われ、UQiYOはオリジナル短篇作品《火づくり》の主題歌を制作した。大阪堺市で代々営まれる鋏鍛治:佐助をモデルに、伝統工芸を介して人と人の繋がりを描くストーリー。2017年の完成・発表を目指している。松浦氏はMotion Galleryを利用して、2017年1月締切で製作費100万円を募るクラウドファンディングを行い、BLACK BOXツアーにも同行した。SNSでは達成金額の報告に合わせてUQiYOメンバーのキャラクターがコミカルに振る舞い、ファンを大いに楽しませた。目標をはるかに上回る額が集まった現在、作品の公開が早くも待たれている。成と気迫で聴かしめた。惜しみない拍手に向ける笑顔には、ほぼ1年がかりで取り組み続けたグランドツアーの幕を見事に降ろした安堵と手応えが感じられた。

151A_RT

2015年6月、文字通りただ1枚だけリリースされたシングル、それが《151A》(いちごいちえ)である。有志によって手から手へ、より南方へ渡すというルールで日本列島を「旅」させ、北海道から沖縄まで《151A》を届かせようという《浮遊する歌》プロジェクトは、栃木を最後に消息が途絶え、現在も凍結している。
同じ轍を踏まないよう対策を講じて再び放流されたのが、リターンとアートの両方の意味をもつ《151A_RT》。旅をするのはクリエイター間のみで、曲から得たインスピレーションから作品をひとつ生む、という新ルールが加わった。ツアー中の札幌で1人目の、デザイナーでガラス作家の青池茉由子の手に渡り、アトリエをシェアする浅田花穂、作曲家・音楽プロデューサーの下川佳代、と順調に旅を続け、ひとときの逗留の跡としてきらめくような作品が次々と生みだされている。プロジェクトの様子はInstagram(#151a_rt)で観測できる。

〜 冬 〜

発表の数々:《THE UNIVERSE〜DayLight〜》/《Modry》

ファイナル後も、UQiYOの活動は続いている。早くも翌週には、幾度となくタッグを組んだNPO法人Ubdobe主催のイベントにて、音楽・ダンス・ファッション等の複合的な要素に福祉感覚を盛り込んだステージショー《THE UNIVERSE〜DayLight〜》を発表した。月末には作曲家の城隆之率いるno.9 orchestraの招きを受け、代官山UNITで年内最後のライブに臨んだ。丈高く三方に巡らせた大判紗幕が、聴く者を包み込むダイナミックなVJを映し出し、迫力の演奏を後押しした。VJとの一体感を強く打ち出したステージは、今後の特色となるかもしれない。

12月は本年の総括と、次年以降へ繋がるプロジェクトが取り沙汰された月となった。
株主総会ならぬ「UQiYO主総会」にて、首脳陣ともいうべきTWO TONE茂出木・spfdesign鎌田両氏とnoteを通じたスポンサーであるサポーター代表を交えて忌憚の無い、和気藹々たる真剣な議論を夜の更けるまで繰り広げた。
最終イベントは中目黒蔦屋書店での《火づくり》展開に合わせた松浦監督のトーク&セッション。提供した主題曲をはじめ、この一年で磨き上げた楽曲の数々で店内の通り客までをも惹き込んだ。

大きな知らせは年末まで続いた。Yuqi・Phantaoはそれぞれクリエイティブディレクター・技術提供者として携わったAIR JAMキッズエリアを見届けに福岡へ飛び、成功を伝えた。そして大晦日も差し迫ったなかで発表された柘植泰人監督の映像作品《Modry》。楽曲提供だけでなく出演も果たしたYuqiは、《Ship’s》でも表現した「時間と生命」を映像のテーマととらえ、「それについて沢山考えた年でもあった」「自分の中での総括にもなる1曲」と述べている。