UQiYO NEW ALBUM PRESENTATiON LIVE @新宿MARZ “音と、 コラボと、重大発表。きっと忘れられない浮き夜”ライヴ・レポート


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去る12月6日、日曜の11時。新宿MARZ。

 

ライブハウスに集うには珍しい時間に、UQiYOのワンマンライブは開場した。
昼間の歌舞伎町って初めて歩いた、と口にする人も居る。
今日のライブは新作発表に加えてプレゼンテーションが用意されているため、「ビジネスプレゼンぽく、あえての昼間」チョイスだそう。これから見せられるものへの期待に、珍しい状況による興奮が加味されて、集まった人たちもなんだか笑顔でそわそわしている。
始まる前から仕掛けが効いてる。

 

やるなぁUQiYO。

 

 

ライブは「Elephant’s Tail」でスタート。
しっかりとビートを刻む明快な曲。
UQiYOには、日常からUQiYOワールドへの導入曲として「Intro」が有るが、
ルーパーを多用して徐々に独特の音楽世界へ引き込んでいくそれでなく、
ガーンと一気に没入できる曲を持ってきたことから、
今日のライブの意識対象がご新規さんよりも
既にUQiYOをよく知っている馴染みのファンであることが窺える。
間髪入れずに続く「Snow White」
タイランドをイメージした前曲から一変、熱射にはためく赤と黄色の幕布をばさぁっと払って、真っ白な氷の世界へ放り込まれる感覚。色と温度の急激な変化に、寒くもないのに全身の毛穴が収縮した。

 

 

これ持ってくるかぁ…!

 

 

音に呑まれる聴衆に拍手をする暇を与えずに、リズミカルながらシックに
畳みかける「June」。
さらに「Dessert Flower」で追い打ちを、と思いきや、ここにきて冒頭でストップした。

 

 

すいませーん、キー違ってました…と畏まって謝るKey.Phantaoさん。

 

 

それまでのきっちりと詰められたクールな雰囲気が一挙に和む。
なんだよ、きれいに繋がってたのにー、と笑顔でなじるメンバー。
(しかし、こちらとしてはキメッキメなプレイに酔うのも好きだけど、こういう場で彼らが無防備に見せる人間味も大好きで、1ライブで1回は失敗してほしいような気もしているのだった)。
改めての「Dessert Flower」は、直前のゆるゆるが嘘のように、
切なさと熱を帯びてしっとりと鳴らされる。

 

 


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ずるいだろ、このギャップ…。
潤んだ空気を引き継いで再びノータイムで始まる前奏は、
抒情曲の代表「Dirtball」

 

 

たっぷりと浸らせた感傷を盛り上げるように、続いてはがらりとタイプの違う
「Drums Of Atacama」
演奏前に聴衆からクラップ音を採取して曲中に取り入れるという、会場の一体感を楽しめるパフォーマンスも人気の曲。
今回のメインクラップは北海道から(!)来場の方。

 

 

会場全体の手拍子も諸共に。パシッ、パシッと小気味いい音を確認して、力強い演奏が始まる。MARZのような音響の良いライブハウスで聴くのはまた格別。

 

 

 


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だいぶ巻きで進めてます、と短いMCを挟んで
(気を許すといつまでも縁側の茶飲み話でしゃべり続けられてしまうことをメンバーも聴衆もよぉく知っているのだ)
小トリは「Twilight」
きらきらと降る喜びと祝福。
音に身を委ねる気持ち良さ。

 

 

いつもながらのトリップを存分に楽しませて、おもむろに、プロジェクターに繋がるPCに指を伸ばし、Vo.Yuqiさんはプレゼンテーションを始めた。

 

 

(昨年のプレゼンライブを思い出す。→http://krei-project.com/log/3853)

 

 

「来年、対になるアルバム2枚出します!」ドラムロールやギターのジャカジャカを派手に効かせて、まさしく鳴り物入りの発表。
1枚目の発売日は1月20日(水)全8曲、 1800円(税抜1,667円)
「話題のある曲が多いので、今日は何曲かピックアップしたいと思います」

 

 

初めに奏でられたのは、先日の【音の上映会】での瑞々しいデュエットが記憶に鮮やかな、「Lost in Wonderland」
少女アリスのパートをつとめる酒井景都さんの声は、今回は録音データから。
メンバーの背後には1903年版の白黒映画【Alice in Wonderland】が映し出される。
酒井さんの実態が無いために、よけいその声は透き通って、
抽象的な「少女」の魂をつよく感じさせる。


 

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新曲2曲目は、「Blue Blur Beach」
説明として、ひとつの恋が物語られた。
すべてが数字で表せる、と信じていた数学者が、95パーセントのものごとは数字では表せないと考える女性に出会って、価値観を崩されるストーリー。
1stアルバム収録の「My Dirty Glasses」の兄弟版、という印象を受けた。
10代の恋のMDGに対して、こちらはオーバー30の、年齢ばかり大人になってしまった元ナード少年の恋か。
生きてきた歳月が長いぶん、打ち破られて初めて見えた知らない世界の新鮮さが、
より強烈で、胸に迫る。
そして「Ship’s」
「マジでやばいゲストアーティスト」を迎えて収録したこの曲の披露は、
歌声の主を当ててもらおうと、音に集中させるために照明を落として録音を流す方式が採られた。

 

 


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視力を預けて澄ます耳に、薄布をはためかせるようにひらひらと揺らぐ女声。
独特の、沖縄音階のこぶしは、――元ちとせさんじゃないですか!

事務所が同じゆえのスペシャルコラボだそう。
凄いな!絡み合い響き合う、二人の風のような歌声は必聴。
アルバムジャケットのアートワークも発表された。
ミニマルにして、意味ありげなデザイン。
(垂れ下がる細かい鎖は2枚目に繋がる布石だろうか?)
タイトルは見た通りの、【Black Box】

 


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BlackBoxとは、中のつくりを理解していなくても、外から見た機能や使い方さえ知っていれば充分使える装置や機構の概念のこと。

 

 

「それはまさに、今の世の中のようじゃないですか?身の回りの物が、どういう仕組みで、どのようにして作られているのか、僕らは知らなすぎている」

 

 

自身が司会のひとりを務めるWEB上の音楽番組《Music Share》で対面した
ドイツのテクノ系ミュージシャン・Mijk Vandijkの言葉を紹介し、
もっと「物」に対して知識をもち、選んでいくべきじゃないか、とYuqiさんは続けた。

 

 

そのコンセプトを共有するのが、次に発表された「新ブランドの立ち上げ」。

 

 

なんだって?まさかファッション系のブランドじゃ…ない…よね??と思いきや、
まさかのそれ系のブランドらしい。
ブランド名は【OTOGI】、音を着る。
なんだか凄いことになっちゃったぞ。

 

 

こちらも、前述の「選ぶ」こととリンクして、
ちゃんと作られた良い物と、音楽との新しい形を目指すようだ。
コラボレーションのお相手は、TWOTONE、イトケン、Phablic×Kazui、etc.…

 

 

一瞬だけお披露目された(ホントにチラ見だった!)
作品群は、シャツやリュックサックなど、白地に黒のポイントの入ったシンプルな造形が並んでいた。
ううぅ、気になる、ちゃんと知りたい!

 

 

「もう少しディープな話してもいいですか?日曜の昼に僕らみたいなものを見に来る皆さんなら大丈夫ですよね。」と伺うYuqiさん。
(大丈夫ですなんでもどうぞ!)

 

 

「この時代は面白い岐路に差し掛かってると思うんです。
なぜなら、ちゃんと良い物を作っている人にちゃんと資金が集まる新しい仕組み、Kickstarter(キックスターター)とかのクラウドファンディングが在るから。
つまり全国総パトロン時代です。

 

 

一歩、半歩でも踏み込むことで、他人事だったのが自分事になって、
一気に楽しくなる。すごく楽しい道楽です」

 

 

「CDを売るだけなら、僕らが音楽を続けられるのはあと2年くらいです」
衝撃の発言に続けて、Yuqiさんは率直に言葉を続ける。

 

 

「だから僕らは今年の頭に【ウキヨノモト】というクラウドファンド的なサポーターズクラブを作りました。1年間の運用を経て、よりプランを整理して使いやすくしました。ライブにたくさん来たい人プラン、お家で楽しみたい人プラン、手軽なライトプラン、ガチな投資家プラン、そして新しい、ライブ+お家用プラン。」

 

 

複合プランが増えてる!
今までサービスごとに2つ加入していた人にとっては、1000円お得になる計算だ。

 


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(プランの詳細→https://note.mu/uqiyo/m/m5fe070f87896

 

 

「プラン特典には、毎月開催しているサポーター同士の【浮酔】参加権もあります。
そのほか、ライブが半額になったり、撮影が出来たり、メンバーのプライベート日記やレアなソロ演奏動画が見られたり… 踏み込むって超楽しいんです。」

 

 

ステージには、窓口となるウェブプラットフォーム【note】の担当者・三原さんも登場し、刷り上ったばかりの見やすい解説用リーフレットを手に使い方の説明を行った。
協賛することでUQiYOの目指すものを共に実現する。
それをYuqiさんは、

 

 

「僕らの“仲間”になりませんか?」と表現した。

 

 

目に見えるかどうかは別に、「もの」が在ればそれを作った人が存在する。
どこからか立ち現れては消える、水のように享受されている音楽も。
しかしひとりでに湧いて流れる川とは違い、言うなればそれは井戸水だ。
爪に血を滲ませながら深く深く地を掘って、筋肉を軋ませながら汲み上げた水を飲んでいるのだ。
「カネの話」はしづらいこととされている。
しかしUQiYOは真正面からそれを語り、金銭方面に無頓着なアーティストを気取るよりも、作品を生み出すことに膨大な時間と労力を掛けている実際的なクリエイターとしての真摯な姿勢をアピールした。

 

 

次のピックアップ曲は「Aero」
日テレ番組、【News EVERY】のお天気コーナーのBGMに採用とのこと。
テレビ画面に!UQiYOの名が!
こんな感じになりますよ、とサンプル天気図の動画と共に曲が再生された。
気象予報士に扮するのはDr.Satoshiさん。
それらしく気圧配置が動いたり太陽マークが瞬いたりする図を見ながらてきとうに解説をつけていく。穏やかな声音と佇まいは実際に居そうな感じがすごくする。

 

 

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(※すごく楽しそうなPhantaoさん。)

 

 

「この図は…中学でやりましたね。そう、西高東低です」(知ってる)
「え~、明日は…全国的に…晴れですね。まぁところによって雨が降ったり降らなかったりでしょう」(何も言ってないに等しい)
などとドざっくりな予報を展開する途中、警戒音が鳴って、
画面上に緊急テロップが入る。

 

 

何事?と注目すると…
《サポートメンバーSatoshi、12月から正式に再加入》の文字!

 

 

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新しいアーティスト名はSima!一気に湧く会場と盛大な拍手。
「この日いちばんの拍手じゃん」とYuqiさんが苦笑を洩らすほどの熱烈さで、
Satoshiさんの昨年の脱退からこの日がどれだけ待望されていたかがよくわかる。
めでたい!
拍手が鎮まるのを待って(新しいサインは出来てるの?との茶々も済ませて)、
最後の曲のピックアップが宣言された。
MVもYouTubeで公開された「Saturn」である。
(→https://www.youtube.com/watch?v=Wd9cb1gDcHQ

 

 

そして演奏の前に、Yuqiさんはもう一度語りかけた。

 

 

「僕らは確かに音楽という好きなことをやってるだけです。でも本気でやっています。趣味と本気の違いは、“ちゃんと感動を与える義務”だと思います。
それを果たすのは、沢山考えて、沢山準備する必要があって、大変です。
でもその義務をこれからも果たしていきたいという覚悟が、【ウキヨノモト】です」

 

 

だから、入って下さい。僕らの覚悟を、見届けて下さい。そう言外に匂わせて、
彼らのプレゼンを締めくくった。

 


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熱いメッセージが余韻を残す中、「Saturn」は、ステージ・フロア共に照明を落として、再びの暗がりで始まった。
Yuqiさんの足元で機材たちがひっそりと放つ燐光が遠い星々を思わせる。
乾いた広がりと、つめたい孤独を窺わせる音の響き。
けれど乾きと孤独が深いほど、出会いがもたらす喜びは大きい。
そんな予感を湛えた暖かさのある曲。
本日1曲目と同様にビートの効いたサビ部分で、ステージの照明が目を射るほどに眩しく輝いた。
激しく明滅する光はスパークする恒星のようで、
同時にこれからのUQiYOの可能性とエネルギーを示すようにも感じられた。

 

 

演奏を終え、聴衆へ向けてお辞儀をしたメンバーが立ち去った後も拍手は鳴りやまず、そして速やかにアンコールを求める手拍子に変つわった。
しかし夜は別のイベントがある。
その準備も有りアンコール演奏は出来ないことを、戻ってきたYuqiさんが申し訳なさそうに伝え、
最後に「その代わり、夜の浮酔に来て下さい」と茶目気を見せて頭を下げた。
フロアを引き払う人々の顔に不満は見られない。
作り込まれた音と、真剣に音楽を続けたいと願っている製作者としての熱意を、
しっかりと感じられたいいライブだった。

 


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「夏の音楽と夏の空気を閉じ込めたボトルレターを秋にリリースする」
「1枚のCDを手渡しのみで北海道から沖縄までリレーする」など、
新作の度に新しく試みられるUQiYOの発表の方法は常に驚きを伴ってきた。
音楽をつくり演奏するだけでなく、その届け方、受け取られ方、
聴き手の人生の一部分への関わり方までを探求するその姿勢は、
音楽クリエイターとしての枠を超えて“アーティスト”と呼びたい。

 

 

少年の斬新な発想を、青年の情熱をもって、壮年の判断と技巧で現実のものにしていく。多岐に亘るUQiYOの融通無碍な活動は、そんなアンビバレンスな能力ゆえだろう。
UQiYOの音楽は耳馴染みの良さと人間味あふれる温もりで、
その名の通り総じて軽やかにふわふわと、聴く者にやさしく寄り添ってくれる。
しかしその職人的に仕上げられた心地良さは、泥くさいまでに徹底して打ち込まれた、実直な労力に支えられていることをリスナーとして忘れないでおきたい。
既存の枠組に甘んじず、音楽業界の未来を冷静に見据えつつ
「いまここで音楽をすること」に向かい合い続けるUQiYO。
節目となる新しい船出とその行く先を、彼らの“仲間”として見守りたい。

 

 

Text by Yuki Hayasaka
Photo by Takahiro Ogawa